ホラー
夜啼きの森 (角川ホラー文庫)

『岡山の貧を描く岩井』
岩井は岡山の「貧」を「これでもか」というくらい描く。「ぼっけえきょうてえ」や「岡山女」もそうだが、岩井の年代でなぜこんなに「おばあさんの時代の岡山の貧」を知っているのか不思議だ。
というのも私は岡山出身の両親を持つが、「岡山の貧」など全く感じたことがなかったからだ。私の知っている「岡山」とは、気候がよくて、食うに困らなくて、人はみなバカなぐらいゆるい、時間の流れがおそーいところ。
ところが、岩井の描くおばあさんの時代の岡山は、全然違った。
貧乏なのだ。
それも、「おしん」とか「赤貧当たり前で娘を売っていた東北のイメージ」に負けずとも劣らない貧しさだ。
例えば、私の母方の祖母は、明治生まれだったが、女子師範を出て一時教職に就いていた。その祖母の若い頃というのが、ちょうどこの物語の時代であろう。祖母がこの物語に登場するなら、「とうてい手の届かない憧れの師範出身」ということになるではないか。女性の名前とて、ひいばあさんまで遡らないとカタカナやひらがなの名前が出てこない。なんだなんだ、この私の知る岡山との違いは。
どうもこれは地域性ということが大きいようなのだ。だいたい、父母の育った中南部では雪が降らない。気候が温暖で、作物もよくとれる。大和朝廷の時代から、「吉備」地方は、その余力を子弟の教育に振り向けてきたため、多くの役人を朝廷に送り込んでいた。と、司馬遼太郎も言っている。よって、岡山は教育県と言われ、私の近親者とて、大した家でなくともなぜだかみな高学歴。子供が5人いれば、男も女もみな大学へやる。…という私の認識は、岩井との出会いによって打ち砕かれ、「海側のやつらばかり得をしやがって」という山側の農民の怨嗟の声に度肝を抜かれたのだった。そんなことだったとは。思わず謝りたくなってしまうのだった。ごめんなさい。山側じゃないやつの子孫で。得したやつの末裔で。…というほどすさまじい「岡山の貧」を描いた傑作。
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